楽園プロジェクト | 北海道の病院・医療施設の検索サイト メディカルケアガイド

インタビュー

特定非営利活動法人

楽園プロジェクト

  • 農福連携
  • 福祉事業所
  • 就労継続支援B型事業所
サムネイル画像

手厚い工賃で障がい者支援 独自の農福連携を推進する福祉事業所

札幌市近郊で多角的な障がい者支援事業を手掛けるNPO法人 楽園プロジェクト(2021年設立)。特に象徴的なのが農福連携の推進で、就労継続支援事業所としては異例の手厚い工賃を設定し、障がい者の自立を後押ししている。独自の手法について、農福連携コーディネーターの加藤 純平 氏(農林水産省認定 農福連携技術支援者)にお話を伺った。

加藤 純平 農福連携コーディネーター

加藤氏 「農業」と「福祉」を組み合わせた言葉で、農業の人手不足を障がい者の働く力で補い、障がい者の工賃向上や多様な働き方の創出と互いに支え合う仕組みです。農林水産省では、農業と障がい者福祉が共に発展する「ウィンウィンの関係」として推進しています。

加藤氏 コロナ流行の少し前に、前身となる就労継続支援B型事業所を立ち上げました。障がい者が一年を通して生産活動に関われる環境を作りたいと考えていたところ、運よく新篠津村のキクラゲ栽培農園を譲り受けました。農園での作業を進めていたある日、近隣の農家さんから「田植えを手伝ってほしい」と声をかけられ、数人の利用者とお手伝いしました。想像以上に皆が丁寧に作業をこなしてくれ、農家さんから「来年もお願いします」と依頼を頂いたのです。これを機に、数人のチームで農家のサポートを継続しています。成果に見合う報酬を先方から頂き、障がい者にも正当な対価を還元する仕組みを整えてきました。

農福連携のイメージ図

加藤氏 農業も福祉も身近な分野ですが、休みの取りづらさや収入の低さなどが影響しているのか、人手不足が続いています。しかし、どちらも将来性があり、若い人にも魅力のある仕事だと思います。農業や福祉が「就職したい業界の上位」に入るような仕組み作りが、当法人の目指す領域です。官民一体での農福連携が全国的に広がっていますが、まだ質の高い事例は少ない現状です。東日本ノウフクコンソーシアムの北海道エリア長として、質の向上と普及に力を入れていきたいです。

加藤氏 農福連携には主に、「福祉事業所が自社の畑を使うタイプ」「農家が福祉事業所を運営するタイプ」「農家に福祉事業所が行く援農タイプ」の3パターンあります。当法人は新篠津村にキクラゲ栽培農園、安平町にしいたけ栽培農園を持っていますが、事業所の種別としては3つ目の援農型が主体です。全国的に珍しい365日24時間営業が可能な就労継続支援事業所の運営規定を活かし、土日はもちろん、早朝であっても農家さんに大きな労働力を提供します。戦力になった分は農家さんから適正な報酬を頂き、B型事業所としては異例の時給1000円を実現しております。B型の工賃は全国平均で月収2~3万円が相場ですが、当事業所の農作業チームは現在、殆どの方が10万円以上稼いでおります。さらには法人内で一般雇用へとステップアップしてく制度も作り、個人の頑張りを後押しします。お給料の面だけではなく社宅も整え、生活保護からの自立も可能です。条件が整えば、一般企業への転職もサポートいたします。

成果物

作業風景

加藤氏 例えばもともとA型に通っていた20代の方が人間関係でうまくいかなく縁があり弊社に来ることになりました。初めは作業を覚えるのでいっぱいいっぱいだったものの、少しずつ作業を覚え後輩ができ後輩に作業を教えることでステップアップしてきました。今年念願の自動車免許の取得にチャレンジし利用者というポジションからパート雇用へ。次のステップは実家からでて一人暮らしを目指します。自立という言葉があまりすぎてはなくみんな一人一人が必要なサポートを受けて生活していける環境を作っていきたいと考えています。楽園プロジェクトに福祉事業を移した3年前は20名弱だった登録者も、現在では75名を数えます(25年10月現在)。養護学校との連携が深まり、卒業生が毎年5人ぐらい入ってくるサイクルができ、理想的な運営基盤が整いました。

加藤氏 障がい者にとって得意分野を見つけやすい事業所にするのが一番です。例えば養護学校の生徒だと、高校1年生から将来設計をするのが普通です。とはいえ、16歳の時点で自分のやりたい仕事や夢を語れる人がどれだけいますか? モラトリアム期間が作りやすい一般の学生に比べ、障がい者には時間的な余裕がありません。楽園プロジェクトではこの点の改善を目指し、様々な仕事をじっくり体験できる環境を提供します。その中で、例えば半年ごとに配置転換するなどし経験値を増やしていきます。高校卒業後、10年ぐらいかけて自分のやりたいことを見つけられれば理想的です。さらにもう一点、一般のB型事業所のようにパソコンの仕事や軽作業など狭い分野に特化した職業支援はしたくありません。一概に農業と言っても、力仕事もあれば車椅子の方でも取り組める園芸栽培、収穫物のパッケージなど様々な仕事があります。不動産業、加工品の製造などでも障がい者にできる仕事はたくさんあります。連携する業界を増やし、バラエティーに富んだ仕事を提供できるように工夫していきます。

加藤氏 障がい者には医療や福祉関係でも活躍できる可能性があります。介護職員の初任者研修を受けている入所者もおり、障がい者ならではの温かいケアができると感じています。ご賛同頂ける病院や高齢者福祉関係者、一般事業者の方がいらっしゃれば、ぜひ楽園プロジェクトまでご連絡ください。また、障がいをお持ちで労働意欲のある方は、一度見学にお越しください。

※メディカルケアガイド2026年札幌市白石区版に掲載されたインタビュー記事です