医療法人 徳洲会
札幌徳洲会病院
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進化する産婦人科 無痛分娩、子宮鏡検査導入
徳洲会グループ10番目の医療機関として、1983年に開院した札幌徳洲会病院(札幌市厚別区)。「生命だけは平等だ」の理念を掲げ、40年以上にわたり札幌市民の健康を支えてきた基幹病院だ。20を超える診療科の中から、今回は産婦人科をクローズアップ。産科・婦人科それぞれのトピックスや今後の展望について、河井 紀一郎 産婦人科部長と助産師の滝口千稲 主任に詳しくお話を伺った。
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河井 紀一郎 産婦人科部長
【卒業校】旭川医科大学医学部
【認定・専門】医学博士、日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本産科婦人科内視鏡学会腹腔鏡技術認定医、日本臨床細胞学会細胞診専門医・細胞診教育研修指導医、日本内視鏡外科学会技術認定医(産科婦人科)、母体保護法指定医、麻酔科標榜医、臨床研修指導医
、助産師-滝口千稲-主任(前列右)-1024x683.jpg)
助産師 滝口 千稲 主任 (写真前列㊨)
26名の助産師が在籍し、医師と協働で妊産婦様の健康管理に努めております(前列㊧は野呂 紀子医師)
■麻酔科と産科が協働でより安全な出産を計画
―貴院の産婦人科は1987年に診療を開始された伝統ある診療科です。特徴や強みはどこにあるとお考えですか?
河井 部長 産科の特徴としては、10年以上前からフリースタイル分娩を行っていること、ご家族の付き添い入院が可能なこと、そして2023年に無痛・和痛分娩を導入したことなどが挙げられます。ほかにも当院独自の取り組みとして、胎児心エコーを妊婦様にしっかり見て頂く機会を提供しております。また、高齢出産が増え妊娠糖尿病などの合併症をお持ちの妊産婦様も多くいらっしゃいますので、そういった方には診療科を横断したケア(併設のない精神科・脳神経外科の合併症は除く)が可能なのも総合病院ならではの強みです。婦人科診療では17年の腹腔鏡手術の導入に加え、22年にも子宮鏡手術を開始するなど、医療機器や技術の刷新を図ってきました。診療は常勤4名、非常勤1名の医師5名体制(内2名が女性医師)であたり、腹腔鏡の技術認定医が2名在籍しております。
―ではまず産科について詳しく伺ってまいります。24年の実績を拝見したところ、医師5名体制で分娩数が289件。河井部長ご自身はこの数字をどう評価しておられますか?
河井 部長 もっと数を増やしていきたいのが率直なところです。受け入れ体制を強化しておりましたが、残念なことに新型コロナの影響で出産数が減ってしまい、ここ数年は思うような結果が残せておりません。コロナも5類になりましたので、これから増えてくることを期待しております。
―23年に無痛・和痛分娩を導入されたというお話ですが、ニーズの高まりがあったということですか?
河井 部長 ニーズの高まりもそうですが、政策的な面でも時代の流れだと言えます。東京では25年10月から、無痛・和痛分娩の費用に対し10万円の助成が始まります。助成の動きは今後、全国に広がると考えており、当院としてもひと足先に導入に踏み切り、事前に希望された産婦様を対象に麻酔科管理による計画無痛・和痛分娩を導入しました。
―麻酔で除痛を行う無痛・和痛分娩では、麻酔科医師の存在が欠かせないのですね。
河井 部長 無痛・和痛分娩を産婦人科医だけで行うのはリスクが伴い、実際に事故があったケースでは麻酔科医の不在が指摘されております。幸い総合病院である当院には麻酔科医師が常駐しておりますので、出産をお考えの方の安心材料になるのではないでしょうか。出産予定日などの管理を含め、産婦人科と麻酔科で緊密に連携を図っていくという意味で、「麻酔科管理による計画無痛(和痛)分娩」と表現しております。
―取り組んでおられるフリースタイル分娩について教えてください。
助産師・滝口 主任(以下、滝口 主任) 妊婦様の中には、腰痛をお持ちの方が多くいらっしゃり、分娩台に仰向けになった状態でお産を行う昔ながらのスタイルだけでは辛い場合があります。どんな姿勢で出産されても対応できるように、当院の助産師はトレーニングを積んでおります。
―フリースタイル分娩を希望される方は多いのですか? また、無痛・和痛分娩とは違い、事前のお申し込みは必要ないのですか?
滝口 主任 産婦様ご本人にも、いざ出産という時にならないと一番楽な姿勢というのは分かりません。その意味で、フリースタイル分娩については、事前にご希望を伺うものではなく、お産当日に楽な姿勢をお申し付け頂くものです。出産は仰向けでやるものだと思っておられる妊婦様もいらっしゃいますので、どんな姿勢でもお産ができるということは早めにお伝えしております。仰向け、横向き、四つんばいなど、どんな姿勢でも対応可能ですのでご安心ください。
―助産師様が26名いらっしゃり、非常に多い印象があります。
滝口 主任 助産師については産婦人科だけではなく、あらゆる科を横断した看護師の混合科となっております。産科の病床数から考えるとちょうどいい助産師数と言えますが、様々な科を総合的に診られるスキルの高い看護師の育成を目指しておりますので、その意味では多すぎるということはありません。
■26名の助産師が様々な資格を活かし外来運営
―26名のマンパワーを活かし、助産師の方はどのような取り組みをしておられるのですか?
滝口 主任 当院は産婦人科の外来と病棟がユニットになっており、助産師は両方を兼務し活躍しております。例えば、母親教室やマタニティーヨガ・ベビーマッサージなど、それぞれの看護師が持っている資格を活かし様々な助産師外来を運営しております。私自身もインスタントマッサージの資格を保有しており、1コマ運営しております。ほか、バランスボールを使用したエクササイズも始めております。産後の身体的な回復を早めるということで、関東圏では数年前から広がりを見せているバランスボールエクササイズですが、北海道ではまだ認知度が上がっておりません。私どもでは今後、力を入れて取り組んでいきたいと考えております。
―付き添い入院について、詳しく教えてください。また入院時の食事ですが、レストランメニューの提供もユニークな取り組みですね。
滝口 主任 当院では、ご主人様の育児参画を促進する意味で付き添い入院されることをお勧めしております。赤ちゃんとお母様の病院での様子を夜間もご主人様にご覧頂くことで、自宅に戻ってからのサポートがスムーズにできます。レストランメニューの提供に関しては、病院食が美味しくないというイメージをお持ちの方に配慮して始めました。当院のレストランは美味しいと評判ですが、実際にお食事をされた産婦様が笑顔で病棟に戻って来られる様子を拝見すると、嬉しく思います。


出産された方には、当院レストランがお祝い料理を提供しております
■腹腔鏡・子宮鏡を駆使し、低侵襲な手術を提供
―続いて婦人科の診療についてお伺いします。17年から腹腔鏡手術を行われているそうですが、適用疾患や特徴について伺います。
河井 部長 腹腔鏡手術は子宮筋腫や卵巣嚢腫に対して適用しております。開腹手術に比べ整容性が高く、かつ低侵襲な手術と言えます。23年の実績では、子宮筋腫(子宮全摘/筋腫核出)64件、卵巣疾患49件の執刀数となっておりますが、数字としてはもっと伸ばしていきたいと考えております。低侵襲な腹腔鏡手術の提供と併せ、さらに当院では麻酔科・看護師・薬剤師・臨床工学技士が協働する術後疼痛管理チームを編成し、痛みの緩和にも努めております。
―22年には、子宮鏡手術も導入されました。導入の経緯や対象疾患、特徴について教えてください。
河井 部長 子宮内膜ポリープ等の治療では、以前は視覚的に限界のある手術が一般的で、病巣を取り残してしまうリスクがありました。一方、子宮鏡手術の場合、子宮内側の病変をカメラで確認しながら手術が行え、より確実な病巣の切除が可能となります。当院では子宮内膜ポリープや粘膜下筋腫に対し子宮鏡手術を適用しており、導入翌年の23年は23件の実績を残しました。腹腔鏡手術と同様に低侵襲で整容性の高い治療法ですので、こちらの数字もさらに伸ばしていければと考えております。
―さて、コロナも5類となり、貴院では25年1月から夕方診療(週1回・月曜日)を再開されました。基幹病院としてますます役割が大きくなります。産科ではオンデマンドに対応した無痛分娩、婦人科ではロボット手術の計画もあるそうですが、詳しく教えてください。
河井 部長 例えば、無痛分娩を希望される妊婦様のお産が夜中に始まったとします。日中の出産に力点を置いた現状では、麻酔科医の出勤する朝まで無痛分娩への対応ができないケースが出てきます。夜中の出産に対しても、麻酔科医と産婦人科医が病院に来て対応するのがオンデマンドの考え方で、簡単に言えば診療時間に関係なく無痛分娩を始められる体制を整えるということです。婦人科におけるロボット手術に関しては、保険適用になっている子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮脱の仙骨固定術などへの適用を考えております。現在はロボット導入の申請段階ですので、導入が決まり次第といったところです。産科のオンデマンド対応とともに、まずは院内の体制を整えてまいります。
―最後になりますが、河井部長と滝口主任から地域住民の方にメッセージをお願いします。
河井 部長 札幌市では約半数の方が、がん検診を受検されておりません。どの診療科においても早期発見・早期治療が肝心ですので、積極的に検診にお越しください。当院では一般的な子宮頸がん・子宮体がんの検査だけではなく、卵巣の検査も行っております。エコーも併用し、より精度の高いがん検診を提供しておりますので、お気軽にお問い合わせください。
滝口 主任 当院では「生命だけは平等である」という理念のもと、患者様を断らない方針を貫いております。看護師としても、皆様の心に残るような看護を提供できるよう、優しく丁寧に接してまいります。ぜひ安心して当院にお越しください。
※メディカルケアガイド2025年厚別区版に掲載されたインタビュー記事です
産婦人科診療時間
時間 | 日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 祝 |
9:00~11:30 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | ||
14:00~15:30 | 1 | 1 | 1 | |||||
17:00~19:00 | 1 | |||||||
※全時間帯予約優先 ※火曜午後は完全予約外来 ※土曜日の受付時間は9:00~11:00まで |
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