JCHO北海道病院2025取材記事 | 北海道の病院・医療施設の検索サイト メディカルケアガイド

インタビュー

独立行政法人地域医療機能推進機構

JCHO北海道病院

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進化を続ける「とよひら周産期メディカルセンター」  和痛分娩の導入に続き、産後ケアも開始

JCHO北海道病院(札幌市豊平区)付属の「とよひら周産期メディカルセンター」では、妊娠期から出産後まで一貫した周産期医療を提供している。地域ではいち早く和痛分娩に対応、さらに2025年には産後ケアサービスを開始した。同センターの特徴について長 副院長兼周産期センター長に総括して頂き、ご同席賜った小田 泰也 産婦人科診療部長・小山 貴弘 産婦人科医長・天野 舞子 副看護師長・瀧川 博子 栄養管理室長にもテーマごとに話を伺った。

長 和俊 副院長兼周産期センター長

北海道大学医学部卒業。

日本小児科学会小児科専門医・認定小児科指導医、日本周産期・新生児医学会周産期(新生児)専門医・指導医など。

現在、北海道大学小児科客員教授兼任。

長副院長兼周産期センター長(以下、長副院長) 周産期母子医療センターには、新生児の手術も含めた高次の周産期医療を担う「総合周産期センター」と、これをサポートする役割の「地域周産期センター」があります。当院は北海道から指定を受けた地域周産期センターであり、施設名が「とよひら周産期メディカルセンター」だと考えてください。

長副院長 少子化のため、全国的に周産期医療は厳しい局面にあり、札幌市も例外ではありません。産科医師の地域偏在、分娩施設の減少が進む中、かねてより周産期医療の再編については議論されておりました。この豊平区には、基幹病院として当院とKKR札幌医療センター(以下KKR)があり、当時はそれぞれが独自で地域の産婦人科医療や新生児部門を含む小児科の診療を行っておりましたが、24年に「医師の働き方改革」の施行が予定され、地域周産期医療の再編成は避けて通れない状況でした。道の協力のもと、当院とKKRで改革に向けた協議を重ね、2023年3月から産科・婦人科の機能分担に至りました。結果として、KKRは分娩機能を中止し婦人科に特化、当院では婦人科診療を縮小し周産期医療の強化を図ることになりました。これを機に元々あった周産期センターを進化させ、誕生したのが「とよひら周産期メディカルセンター」です。機能の集約化に際しては設備面の強化を図り、新生児集中治療室(NICU)を8床から9床に増設、新生児回復室(GCU)を6床新設しました。マンパワーの充実も随時図り、令和7年現在で男性産婦人科医師5名、女性産婦人科医師3名、助産師39名が在籍しております。NICUは小児科医8名が支えています。機能分担の効果としては、分娩数が22年度の437件から23年度の565件に増えました。しかし、24年度には少子化の影響で454件と減っています。一方、NICUの入院数は22年度の185件から24年度の316件と年々増えています。設備強化の補足になりますが、超緊急の帝王切開に備えた手術室を昨年9月、4階病棟に新設しました。スタッフの習熟など条件が整い次第の稼働を考えております。

長副院長 当センターは地域周産期医療の中核拠点です。合併症を抱えた妊婦様の出産や帝王切開など、よりハイリスクな分娩に対応してきた実績は大きな強みです。難しい出産を担ってきたことで、在籍する医師や助産師のスキルは非常に高く、内科的な処置であれば新生児の治療も安心してお任せ頂けます。豊平区・清田区・南区はもちろん、場合によっては札幌市以外からも母体搬送や新生児の搬送があるのは、当センターが総合周産期センターに匹敵する水準の医療を提供している証左です。私自身は北海道大学病院の周産母子センターで長くキャリアを積み、その間200㌘台の赤ちゃんの分娩に携わったこともあります。周産期新生児専門医・指導医として築いた知見を、地域の皆様に還元して参ります。なお、当センターでは24年より和通分娩に対応、さらに今年4月から産後ケアを開始しました。妊娠・出産・育児までトータルで支援する体制が整っておりますので、安心してご利用ください。

6床の新生児回復室(GCU)。ご家族様が主体的に授乳や沐浴など、お子様のケアを行える場所となっております

小田産婦人科診療部長 東京では和痛分娩が増えてきているという話は聞いており、当院でも時代のニーズに応えようということで、なるべくリスクの低い経産婦様を対象に適用を開始しました。妊娠38~39週の計画分娩とし、硬膜外麻酔による和痛分娩を麻酔科医師の管理のもと行っております。特徴と言える点は、妊婦様が主体的に分娩に臨めるよう、いきめる力を残した疼痛コントロールをしていることです。計画分娩ですのでスケジュールしたその日のうちに出産するのが基本となります。陣痛が多少あったほうが分娩はうまく進む側面もあり、当院では「無痛」ではなく「和痛」としております。「和痛分娩にして良かった」という経産婦様が多く、嬉しく思います。今後は麻酔科医師のスケジュール次第で初産の方にも適用を広げていければと考えております。

小山産婦人科医長 何といっても当院は地域周産期母子医療センターです。産科の設備が整っていることはもちろん、赤ちゃんの管理についても培ってきた経験値があります。総合病院を中心に和痛分娩を導入しているところは増えてきましたが、当院のような周産期医療の中核施設が和痛分娩を行う意義は大きく、ご利用いただく妊産婦様にも大きな安心感があるのではないでしょうか。

天野副看護師長 豊平区にはこれまで、産後ケアを実施している病院がありませんでした。当院にも産後ケアのお問い合わせが多数あり、ニーズの高まりは感じておりました。札幌市の助成(札幌市に住民票がある方が対象、1回の出産につき7回利用可能)がスタートしたこともあり、今年4月に開始したというのが経緯です。母乳・育児支援や離乳食の相談、お母様の休息支援など一般的なサービスは揃っております。特に休息を希望される方が多いため、お子様をお預かりしている間にゆっくりお食事を摂ってもらうなどしております。なるべく外食気分を味わえるように、病院のレストランの予約席で召し上がって頂いております。

天野副看護師長 そうだと思います。中にはデイサービスの時間を全て顔なじみの助産師との会話に充てたいという方もいらっしゃるぐらいです。これは総合病院ならではの強みですが、当院でお産された方は小児科の先生とも繋がりが強いため、産後ケアにお越し頂いた際は、必要に応じ医療的バックアップも可能です(※医師の診察は産後ケアサービスには含まれません)。26年4月を目途に宿泊サービスも開始できればと考え個室をリニューアル中です。完成は今年の10月を予定しておりますが、壁紙やカーテンなども可愛らしく、かなり温かい雰囲気に仕上がりそうです。また、札幌市の助成の対象でない方、例えば里帰り出産される方の産後ケアプランについても検討中です。

産後ケアの宿泊サービス開始に備え、個室をリニューアル中です(25年10月完成予定)。心身の疲れを癒やして頂けるように、温かい雰囲気のお部屋を準備しております

出産されたお母様には、管理栄養士が真心を込めた「お祝い膳」を提供します。栄養士の目線だけではなく、医師・看護師・助産師など産科に関わるスタッフの意見を取り入れた自信作です

瀧川栄養管理室長 妊産婦様の栄養管理で特に重要なのは、胎児に必要な栄養をしっかり摂って頂くことです。不足がちの場合は看護師・助産師と補食などの対策を考えていきます。またサポートの対象は入院期間に限りません。例えば外来で妊娠糖尿病の方がいらっしゃれば栄養相談という形で関わり、赤ちゃんが離乳食に移る時期には、無料で離乳食相談(毎週水曜日)を行っております。

瀧川栄養管理室長 お祝い膳に関しては「ご褒美ランチ」をコンセプトに、栄養士の目線だけではなく看護師・助産師・産科の先生方のご意見も取り入れながら考案した自信作です。季節の野菜をふんだんに使用し、夏場は基本的に道産の食材にこだわっています。またお祝い膳に限らず、継続的にお母様を支援できるよう自宅に戻られてからのレシピの提案なども行います。産後の栄養管理について、分かりやすい資料を配布しておりますのでご活用ください。

天野副看護師長 お母様方を対象にした「母親学級」、お父様にもご参加いただく「両親学級」を開催しています。母親学級には、「お産コース」や「産後・育児コース」などがあり、ご自身の状況に合わせ参加いただける編成です。マタニティーヨガやベビーマッサージは特に人気が高く、お友達作りの場としてもぴったりです。また、働きながら子育てをされているお母様にも配慮し、web動画やインスタグラムなどでも情報を発信しています。出産をお考えの方、分娩施設をお探しの方はぜひ一度、当院ホームページをご覧ください。

長副院長 NICUはもちろんですが、お母様と一緒に退院できる元気な赤ちゃんも全員、当院では必ず小児科医が診察しております。周産期センターというと、敷居が高いイメージをお持ちの方もいらっしゃいますが決してそうではありません。妊娠期から出産後までご家族に寄り添うよう心がけております。当院ではソーシャルワーカーが熱心に関わってくれますので、貧困などの社会的背景をお持ちの方の出産にも対応しております。お子様をお考えのご夫婦は、ぜひ当センターでの出産をご一考ください。

※メディカルケアガイド2025年札幌市豊平区版に掲載されたインタビュー記事です

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