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インタビュー

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地域医療は役割分担の時代に

今年4月に迫る「医師の働き方 改革」。診療・人材育成・研究という三つの使命が課せられている大学病院では、医師の労働時間短縮の中でいかに して実績を維持していくのか。2023年7月に旭川医科大学病院の病院長に就任された東 信良氏に、病院改革の状況や 今後の地域医療の変化についてお話を伺った。

病院の基本理念を「患者中心の医療を実践し、地域医療に寄与するとともに、国際的に活躍できる医療人を育成する」と改めた旭川医科大学病院。道東・道北の医療中核拠点として、手術件数は多い年で8,000件に迫る実績を誇る

東 信良 病院長

東 病院長 最初に行ったのは「病院長ヒアリング」で、病棟ごとの課題について各病棟医長らと意見交換をしました。その他、「宿直体制改革」「タスク・シフト/シェアの推進」「医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進」など、医師の働き方改革に対応するための準備を進めております。

東 病院長 特定機能病院として高度な医療の提供はもちろん、我々のような国立大学病院では、「次代を担う医療人の育成」と「新たな医療技術の研究・開発」も大きな役割です。4月の働き方改革で勤務医の残業時間に制限がかかる中、これまで通り「特定機能病院」「医療人の育成」「研究・開発」という3つの使命を果たさなくてはなりません。多くの大学病院では、診療と教育の水準を維持しながらの働き方改革により、研究時間が減少し、日本の医療が立ち遅れるのではないかと危惧されております。

東 病院長 診療業務の効率化による研究時間の確保です。当院では独自にできる取り組みとして、Web予約システムの整備やクリニカルパスの活用など、医療DXを進めております。紹介状をFAXでやり取りする今までのやり方だと、診療日の決定に半日かかり医事業務の大きな負担となっておりましたが、Web予約システムを導入したことにより短時間で日程調整ができるようになりました。また、患者さんの入院から検査・手術・退院までを効率的にスケジュールするクリニカルパスの利用率についても、当院では既に50%に近づいており、成果が出ております。一方、病院のDXと併せて取り組まなくてはならないのが「タスク・シフト/シェア」の推進です。当院では、医師が行う医療行為、例えばドレーンの抜去やカテーテルの交換、点滴投与量の調整などの一部を分担できる特定看護師を育成するため、「看護師特定行為研修」を実施しております。これまで5名の特定看護師が輩出し、現在も他院からの受講者を含め4名が研修中です。また、事務職員が、医師事務作業補助資格を取ることで、カルテ記入等の事務作業を任せられるようになります。特定看護師や医師事務作業補助資格を持つ事務職員が増えることで、診療における医師の負担が減り、結果として研究時間の確保につながりますので、タスク・シフト/シェアのための人材育成をさらに進めてまいります。

医師の働き方改革が迫る中、存在感を増している特定看護師。当院では「看護師特定行為研修」を実施しており、これまでに5名の方が資格を取得されました

旭川医科大学の50周年を記念して開かれた公開講座には、多数の市民の方にご参加いただきました

東 病院長 旭川の基幹病院としては、当院のほか市立旭川病院・旭川厚生病院・旭川赤十字病院・旭川医療センターがあります。病院長の定期会合で医師の働き方改革に伴う課題について協議してきましたが、今後は救急医療・外来診療などで、それぞれがどの分野を重点的に担当していくかなど、細部について踏み込んだ議論を進め、地域医療全体として診療の効率化を図っていくことになると思います。すでに当院と一部遠隔地の医療機関とで、ドクタースマホを活用したクラウド型遠隔医療を始めております。救急搬送前や搬送中にCT画像等を送ってもらうことで、迅速に手術等の準備ができますし、現地での治療が可能と判断した場合は搬送を控えられるメリットもあります。医師同士の信頼関係も築けてきた手応えがありますので、今後も有効活用していきます。また、もともと院内職員向けに発行している院内報を、広報誌として近隣医院にもお配りするなどし、情報共有や連携の輪を広げていければと考えております。

東 病院長 コロナ禍は当院にも大きな教訓となりました。困難に直面した時こそ基本理念に立ち返り、行動することをスタッフには求めております。 ①患者中心の医療実践 ②地域医療貢献 ③医療人の育成という以前の基本理念を踏襲しておりますが、いざという時に思い出しやすいよう、短くコンパクトなフレーズに変更しました。

東 病院長 地方では少子高齢化や過疎化のため、18歳以下人口の減少が深刻です。医療人の育成を基本理念の一つに掲げている私たちにとって、人材確保の面で危機的状況と言えます。次代の医療人開拓の期待を込め、ブラックジャックセミナーには中学生の方に参加いただいていて、普段は入れないドクターカーに乗って、心臓マッサージや外科の手技の一部を体験してもらうことで、医療への関心が高まればと考えております。過去3回セミナーを実施いたしましたが、参加した方の中から「今度、医学部を受験します」と嬉しい報告が届いております。一方で残念なのは、看護師・薬剤師の離職率が高止まりし、さらにコロナ禍で加速してしまったことです。当院では看看連携セミナー等で看護人材育成に励んでおりますが、今後は国の医療制度全体の中で考えていかなければなりません。いずれにせよ地域医療の観点では、地元で育った医師・看護師・薬剤師が「地域枠の人材」として根付いて活躍することが重要になってきます。今後もイベントやセミナーを通じて、地域医療を支える医療人発掘と育成に力を入れていきます。

東 病院長 4月以降、さらに地域医療連携が進むと予想されます。地域の方々におかれましては、お身体に不調を感じられた場合、まずは「お近くのかかりつけ医」にご相談ください。旭川医科大学病院では各医療機関から頂く紹介状を基に、ハイブリッド手術室や半導体CT-SPECT装置など、高度な設備を駆使して診療と治療にあたってまいります。医師の残業時間に制限が設けられますが、今後も医療人育成と新しい医療技術の研究という使命を併せて果たしていきます。患者の皆さんにはご不便をおかけするかもしれませんが、ご理解ご協力のほどお願い申し上げます。

過去3回行ったブラックジャックセミナーでは、多くの中学生に医師業務の体験をしていただきました

熱心に医師の説明に耳を傾ける中学生の参加者。セミナーから未来の医療人が出てくることを期待しております

※メディカルケアガイド2024年旭川市版に掲載されたインタビュー記事です

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