メディカルガイド豊平区インタビュー記事
※メディカルガイド2024年札幌市豊平区版に掲載されたインタビュー記事です
札幌市豊平区にある北海道整形外科記念病院(1978年開設)は、年間の手術件数が3000件を超える全国トップクラスの整形外科病院だ。昨年の秋に先進医療のロボティックアームを導入し、より正確・安全な人工関節置換術を提供している。股関節と骨粗鬆症がご専門の大浦 久典 副院長(股関節センター長兼任)に、同院の治療方針や人工股関節手術についてお話を伺った。
―患者様の罹患部位によって、「上肢」「下肢」「脊椎」「股関節」の4分野に細分し、診療にあたるのが貴院の特色です。どういった点にメリットを感じておられますか?
大浦 久典 副院長 医学系の大学では昨今、各分野のエキスパート育成に力を入れる傾向にあります。その意味で医師の側からすると、学んできた専門分野の知見を、患者様に集中して還元できる利点があります。患者様側にとっても、痛みを感じる罹患部について、専門医に相談できるのは、安心感や満足感に繋がるのではないでしょうか。とはいえ、体の複数箇所に痛みを感じる場合などは、それぞれ専門の科で検査や診療を受けていただく必要があります。
―「上肢」「下肢」「脊椎」「股関節」の4分野とは別に、貴院では「リウマチ」「スポーツ外傷・障がい」「骨粗鬆症」と疾患群の区分けもされております。罹患部位の区分けを補足するものが、疾患群の区分けと考えて良いのですか?
大浦 久典 副院長 補足というよりは、縦の糸と横の糸の関係です。罹患部位、疾患群の両方を考慮しながら治療を進めていくことが重要になります。リウマチに関しては最近の治療が複雑化してきているため、整形外科とは分けて考えることも必要で、当院では「リウマチ科」として独立しております。
―さて、昨年の秋に導入された先進医療のロボティックアームについて教えてください。
大浦 久典 副院長 軟骨が減ることで起こる、変形性関節症の患者様の中には、やむを得ず人工関節が必要となる方がいらっしゃいます。当院が導入したロボティックアームは、人工股関節と人工膝関節の置換術で使用可能です。最も優れた点は、治療する部位と人工関節の位置関係を正確に把握でき、計画通り手術ができることです。
―大浦副院長は股関節がご専門です。ロボティックアームを使用した人工股関節置換術の手順や、実際に操作した印象を教えてください。
大浦 久典 副院長 手順には「術前計画」「術中調整」「ロボティックアーム支援」の三段階があります。患者様の骨格情報をコンピューターに入力し、人工関節のサイズや設置位置、骨を削る深さや角度を決定するのが術前計画です。術前計画に基づき手術を進めていきますが、ロボットアームを操作することで人工関節が計画した角度・位置・深さに設置することができます。また、骨を削る深さ、人工関節の設置位置等が治療計画から外れた場合、自動的にロックがかかり動きを制御してくれます。実際に操作してみると、治療計画通り正確な人工関節設置が可能だという印象があります。当然、術後の痛みや脱臼リスクの軽減にも繋がるのではないかと考えております。もちろんロボティックアームの支援があるとはいえ、手術を行うのは医師ですから、以前と同様に技術が必要なのは言うまでもありません。
―今後、ロボティックアーム支援の人工関節手術は増えていきそうですか?
大浦 久典 副院長 年齢を重ねると、軟骨はどうしても減ってしまいます。今後、高齢化が進んでいくことで、股関節や膝関節の疾患は増えていくと予測できます。高齢者に多い骨粗鬆症の患者様の場合、人工関節置換術では、余計な骨を削らないよう細心の注意が必要です。その意味で、治療計画通り正確な手術が行えるロボティックアーム支援は今後、存在感を増してくるはずです。
―貴院の高い医療技術や先進医療を求め、道内各地から患者様が訪れております。大浦副院長からメッセージをお願いします。
大浦 久典 副院長 ロボティックアームなど先進医療の話をしてきましたが、人工関節というのは最終手段です。痛いところは何でも切るという発想ではなく、まずは自身の病態を把握し、消炎鎮痛剤など薬物療法やリハビリテーションで乗り切って頂くのがベストだと考えております。どんな病気でもそうですが、大切なのは早期治療を行うことです。お体に痛みなどがある場合は、早めに当院にお越しください。診察やレントゲン診断等で痛みの原因を一緒に究明していきましょう。患者様の健康をサポートできるよう、すべての職員が研鑽を積んでまいりますので、今後とも当院をよろしくお願いします。