「病気そのものを診るのではなく、病気を持った患者さん全体を診る」
これは消化器病学と心身医学の第一人者、故・並木正義旭川医科大学名誉教授が掲げた診療理念であり、上原聡院長が恩師の考えを実践すべく、2006年10月に当クリニックを開業しました。専門領域である総合内科と消化器内科はもちろん、糖尿病、高血圧、高脂血症などの生活習慣病、喘息や慢性閉塞性呼吸器疾患、漢方医学、心身医学、禁煙指導など幅広い診療を行っています。
地域のかかりつけ医という重責を果たすため、積極的に診療設備の充実も図ってまいりました。嘔吐感の少ない胃カメラ・経鼻内視鏡をはじめ各種内視鏡検査システム、ヘリカルCT装置、超音波検査装置、超音波式骨密度測定装置など多数の専門医療機器を導入し、質の高い医療の提供に努めております。
また患者様を第一に考えた検査・治療体制を整えるため、施設の随所に心くばりを施しました。特に、検査室と直結する専用トイレ付き内視鏡控室は、大腸内視鏡検査を受ける患者様に好評を頂いております。感染症拡大防止の観点から別室を設け、インフルエンザなどでご来院の方と一般の患者様との接触回避にも尽力しております。
当院は会社帰りや学校帰りに「コンビニエンスストアのように立ち寄れるクリニック」を目指し、診療は午後7時まで行っています。健康に関することならどんなことでも、気軽に立ち寄ってご相談いただければ幸いです。
メディカルガイド手稲区インタビュー記事
※メディカルガイド2023年手稲区版に掲載されたインタビュー記事です
患者様全体を診る全人的医療を実践
―病気そのものを診るのではなく、病気をもった患者さん全体を診る―。消化器病学と心身医学の大家・故並木正義氏(元旭川医科大学名誉教授)が掲げた診療理念を継承し、札幌市の地域住民から絶大な信頼を集める上原内科クリニック(2006年開院、院長・上原聡氏)。同院が実践する全人的医療について、恩師・並木正義氏とのエピソードを交えながら上原院長がお話くださいました。
■恩師・故並木正義氏から学んだ真心の内科診療
―貴院のホームページを拝見すると、上原院長の恩師・故並木正義氏のお言葉がいくつか紹介されており、心に響きます。「病気そのものを診るのではなく、病気をもった患者さん全体を診る」という診療方針は並木先生のお言葉だそうですね。
上原院長 並木先生との出会いは、私が医学生だった45年以上前になります。当時の大学病院の内科学では、珍しい疾患や病態にしか関心のない教授が多数派でした。そんな風潮の中、患者様との人間的なふれあいを大切にし、ありふれた疾患でも熱心に診療されていたのが並木先生でした。丁寧な診療が評判を呼び、並木先生の教授外来には患者様が殺到して訪れました。教授外来の受付は午前中に締め切っているにもかかわらず、並木先生の診療は夜遅くまで続くことも珍しいことではありませんでした。
―並木先生の診療姿勢を、他の教授陣はどう見ておられたのですか?
上原院長 診療より研究に没頭したいタイプの教授の方は、並木先生のスタイルを苦々しく思っていたかもしれません。一方、並木先生の診療スタイルに共感していた学生時代の私としては、卒業後に並木先生が主宰される「第三内科」へ入局することに迷いはありませんでした。教授外来の助手として、並木先生と患者様との信頼関係が構築されていく様子を間近で拝見し、「これこそまさに内科外来の理想だ」と確信いたしました。
■消化器の内視鏡検査では患者様の心まで診る
―「消化器の内視鏡をやる者は心の内視鏡もやりなさい」という並木先生のお言葉にも含蓄があります。
上原院長 医師は内視鏡などの医療機器を用い、疾患を診ることに懸命になりがちですが、並木先生は患者様の生活背景や心理なども併せて診る全人的医療の重要性を説いていらっしゃいました。例えば腹痛の患者様が癌の心配をして大学病院を訪れたとします。内視鏡などの検査を終え、「癌ではありませんよ」と検査結果だけ伝えても、患者様の不安が全て解消されるわけではありません。癌ではないという根拠、腹痛が起きた原因を説明しなければ、患者様が大学病院まで足を運んだ不安な気持ちに寄り添う医療とは言えません。教授外来の助手時代のエピソードになりますが、並木教授が学会などで不在の際は、私が代わりに診療を担当することがありました。診療室に居る私の顔を見て並木教授が不在だと分かると、患者様は明らかに落胆されるのです。並木先生の教え通り診療をし、同じ処方箋をお渡ししたはずなのに、次回の来院時にその患者様は、「前回もらった薬は効かなかった」と並木先生に訴えられるわけです。私としては不本意な気持ちもありましたが、いつしか「並木先生の出す処方箋には、文字に現れない“並木カプセル"が入っているのだ」と考えるようになりました。自分も“並木カプセルにならなくてはいけない"という気持ちで全人的医療を実践し、40年以上が経ちました。
―貴院が診療に取り入れていらっしゃる漢方医学も全人的医療の一つですか?
上原院長 漢方医学はまさに全人的医療で、消化器の治療においても心身全体を診て必要な患者様には漢方薬を有効活用しております。当時、大学の内科学教室では、漢方を勉強していると色眼鏡で見られる風潮がありましたが、並木先生率いる第三内科では漢方も大いに学べました。残念ながら並木先生の退任後は、教室での漢方を含めた全人的医療の実践が難しくなり、私は大学病院を離れることになりました。大学病院では「臨床」「研究」「教育」三本柱で医療に携わっておりましたが、新天地の町立中標津病院ではほぼ「臨床」一本に集中でき、多くの患者様と触れ合うことで改めて全人的医療の大切さを確認できました。自分でクリニックを開業したのは、全人的医療を悔いなく実践したいという思いからでした。
■2~3年後を目途に、ご子息との2診体制へ
―院長の全人的医療を支える診療設備について伺います。X線CR装置や経鼻内視鏡、クリニックとしては珍しいヘリカルCT装置などを完備されています。また、内視鏡検査室と直結した専用トイレ付控室を備えるなど、患者様への配慮に溢れています。
上原院長 ヘリカルCTはランニングコストも高く付きますので、開業コンサルタントは導入に反対しておりました。しかし、私としてはクリニックの医療レベルを落としたくないという思いで導入に踏み切りました。実際、CTがあったからこそ救えた患者様はたくさんいらっしゃいます。例え月に一人、二か月に一人でも、救える命があれば、導入に踏み切ったのは大成功だったと考えています。内視鏡検査室と直結した専用トイレ付控室は、大腸内視鏡検査前に行う大腸内洗浄の際、気兼ねなくトイレを使用していただくために配備いたしました。
―生活習慣病治療では「あなたが主治医です」という標榜を掲げておられます。
上原院長 高血圧・高脂血症・糖尿病など生活習慣病の患者様には定期的にご来院いただきますが、1~3か月に1回の診療だと医師の目が届きにくいのが実情です。そこで、高血圧の患者様には血圧手帳をお渡しし、ご自身で朝晩の血圧を測り、併せて必要に応じて食事のメニューも記入して頂いています。そうすることにより、血圧の変動だけではなく、血圧を上げる原因となる食生活(特に食塩の摂り過ぎなど)も見えてきます。長年の診療で気づいたことですが、朝だけ血圧の高い患者様の中には、睡眠時無呼吸症候群を発症しておられる患者様がいらっしゃいます。そのような疾患の早期発見につながることがありますので、家庭血圧測定は大切な疾患管理方法と考えております。
―開院以来18年、院長の全人的医療を求め、多くの患者様が貴院を訪れていらっしゃいます。地域住民の方にメッセージをお願いします。
上原院長 診療の待ち時間が長くなることがあり、患者様にはご迷惑をおかけしております。約2、3年後の話をして恐縮ですが、消化器内科医をしている息子が、当クリニックに加入する予定です。2診体制が実現すれば、診療待ちの時間を少しは短縮できると考えておりますので、もうしばらくお待ちください。これからも会社・学校帰りに気軽に立ち寄っていただけるクリニックを目指し、丁寧な診療を心がけてまいります。お身体の悩みがございましたら、どうぞ遠慮なくご相談ください。