当院は、豊平区中の島の地に、昭和28年「北海道社会保険中央病院」として開設後、長きにわたり地域の皆様と歩んできたところです。平成26年から新設された全国組織の独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)傘下の北海道の中核病院として名実ともに新たな出発をしております。
消化器・呼吸器・周産期・腎膠原病の各センターを中心に、多くの診療科と、看護師、リハビリ職員、管理栄養士等の多職種が連携し合い、広域かつ専門的な医療を展開しています。健康管理センターは疾病予防と地域保健に関わり、介護老人保健施設にて包括的な地域介護の推進をはかり、当地域のあらゆる世代のそれぞれのシーンにおける保健・医療・介護をシームレスにカバーできる施設と自負しています。
地域の皆様には、安全で安心できる医療環境と健康増進、さらに幅広い介護支援の選択肢を提供していけるよう、職員一丸となって取組んでいます。
病床数
358床<一般病床312床・結核病床46床(実働10床)>
(一般病床の内 MFICU3床・NICU8床)
併設施設
健康管理センター・こどもデイサービスセンター
附属施設
JCHO北海道病院附属介護老人保健施設「ジェイコー中の島」
- 災害救急告示病院(外科・整形外科)
- 二次救急輸番制参加病院(消化器系・小児科)
- 札幌市産婦人科準三次救急対応医療機関
- 小児救急医療支援事業参加病院
- 糖尿病の医療機能を担う医療機関
- 地域医療支援病院
- 地域周産期母子医療センター
- 北海道がん診療連携指定病院
- 日本医療機能評価機構認定病院
- 臨床研修指定病院
メディカルガイド豊平区インタビュー記事
※メディカルガイド2022年札幌市豊平区版に掲載されたインタビュー記事です
産科・新生児医療をより専門的に
札幌市豊平区で急性期医療の中核を担ってきた独立行政法人 地域医療機能推進機構 北海道病院(JCHO北海道病院/院長・古家乾氏)。同院が誇る4つのセンター(消化器、呼吸器、腎・膠原病、周産期医療)のうち、周産期医療センターが2023年4月から産科専門として生まれ変わることになった。古家乾院長に再開した循環器内科の展望や、周産期医療改革について話を伺った。
■地域包括ケアの狙いは健康寿命を延ばすこと
――貴院は1953年に北海道社会保険中央病院として誕生し、北海道社会保険病院時代も含めて、常に地域医療の中核を担っておられます。約70年間で最も大きく変わった点は何ですか?
古家院長 当院は設立当初、結核の患者様のための療養所でした。結核専門病院としての役割は罹患者の減少とともに小さくなり、現在では周産期から成人・高齢者までの急性期医療を担う基幹病院として地域に貢献しております。
――付属の施設に「健康管理センター」や介護老人保健施設の「ジェイコー中の島」があります。医療に介護・福祉・予防を加えた地域包括ケアを実践しておられます。
古家院長 健康管理センターは各種健診を通じ、病気の早期発見・早期治療に努め、ジェイコー中の島では在宅復帰を目指した介護に取り組んでおります。高齢者にも活躍してもらわなければ、国民皆保険制度を維持していくことはできません。「未病」という言葉もある通り、病気を予防し健康寿命を延ばす視点が地域包括ケアでは大切だと考えております。
――“1つの疾病を複数の診療科で、複数の内科・外科医が診る"というセンター機能が貴院の特色です。「消化器」「呼吸器」「腎・膠原病」「周産期医療」という4つセンターについて、最初の3つについてまず教えてください。
古家院長 消化器センターでは内視鏡的治療からインターベンション、がん化学療法まで幅広く診療しています。消化器と一口にいっても、胃や大・小腸、肝臓、胆道、膵臓など様々な臓器があります。臓器の種類が多い分、最も患者様が多いのが消化器センターです。また呼吸器センターでは、肺がんから各種肺炎や気胸まで、あらゆる呼吸器疾患に対応しております。腎・膠原病センターにおいては、腎臓内科医とリウマチ医がそれぞれ専門性を保ちつつ協力を図り、腎疾患と膠原病の診療にあたっております。すべてのセンターに共通するのは、内科・外科・複数の診療科の垣根を取り払い、専門性の高いチームとして診療にあたっている点です。
■地域医療機関と連携し「周産期医療」の改革へ
――4つ目の「周産期医療」については2023年4月から、KKR札幌医療センターと連携し、機能分担されると伺いました。経緯を教えてください。
古家院長 少子化傾向ではありますが、高齢出産が増えてきたことで、不妊治療、人工授精、ハイリスク分娩など周産期医療の役割は多岐にわたるようになりました。NICU(新生児特定集中治療室)、MFICU(母体・胎児集中治療室)、助産師外来などの運用や新生児医療専門医の配置など、周産期医療にはマンパワーが必要です。産科・婦人科をひとつの医療機関で担うのが難しくなってきたため、2023年4月からは産科・新生児医療を主に当院が担当し、婦人科はKKR札幌医療センターにお願いすることになりました。
――産科・婦人科の機能を両院で分担することで、不妊治療を受けている方、出産に臨まれる方にメリットはありますか?
古家院長 必要なマンパワーと医療設備を産科・婦人科ごとに集約することで、提供する医療の質が上がるのではと期待しています。また、出生数の減少とともに分娩に立ち会う機会が減ってきた産科医や助産師にとっては、産科を集約することで多くの出産に携わることができ経験値となります。医療スタッフがスキルアップすれば、分娩に伴うリスクの軽減につながると考えております。
――コロナ禍においては、感染症拡大時の分娩の受け入れ拒否が報じられるなど、課題が残りました。貴院ではどんな対策を立てておられますか?
古家院長 緊急出産に備えるため、当院では周産期センター内に産科専用の手術室を設置する予定です。通常は陽圧の手術室を使用しますが、コロナに感染した妊婦様の分娩を適切に行えるよう、陰圧にも対応可能な手術室になり、センター内に陰圧入院個室も完備されます。
■先進医療機器を導入し役割を増した泌尿器科
――さて、貴院ではここ数年で泌尿器科の手術執刀数が大幅に増えたと伺っております。
古家院長 前立腺肥大症の手術に「ツリウムレーザー」を導入し、経尿道的前立腺蒸散術を始めたことが要因だと思います。従来の手術に比べると短時間で済み、手術侵襲も少ないため、患者様の心身への負担が軽減できます。男性の前立腺疾患が増えており、今後ますます泌尿器科の役割は大きくなると考えられます。
――循環器内科を令和2年に再開されましたが、今後どう展開されますか?
古家院長 大学病院などから人材のサポートを受け、常勤医師2名体制で令和2年に再開しました。さらに人材確保を進め心臓・血管領域のインターベンションや心不全の治療の充実を目指します。
――これまで臨床研修病院として医師の育成に実績を挙げられ、さらに昨年には肝胆膵高度技能修練施設にも認定されました。
古家院長 消化器の中でも肝胆膵領域は難しい手術が多く、医師には高いスキルが求められます。内科・外科の専門医を基本建ての一階部分とし、プラスαで肝胆膵のサブスペシャリティを育成し二階建てとすることが修練制度の狙いです。当院が積み上げてきた実績が認められ、肝胆膵高度技能修練施設の認定は消化器内科・外科・放射線診断科・麻酔科がチームとして取り組んだ結果と考えています。
■新興感染症拡大時こそ試される病院の総合力
――最後に今後の診療方針を含め、貴院が目指す理想像を教えてください。
古家院長 2024年に第8次医療計画がスタートします。これまでの5疾病5事業から、新興感染症対策が加わった5疾病6事業となります。新型肺炎の歴史をみても、約20年の間にSARS、MERSに続き、今回のCOVID-19が現れました。世界中の人とモノが往来する現代において、新しい感染症の流入は避けられません。感染拡大の局面で試されるのが病院の総合力だと言えます。当院はCOVID-19の流行に際しても、患者の受け入れを拒むことなく職員一同で力を合わせて対処してきました。今後も「新興感染症に対応しながら、ほかの医療も全力で行う」という方針を貫き、地域医療の中核として責任を果たしてまいります。