函館市メディカルガイドインタビュー記事
※メディカルガイド2024年函館市版に掲載されたインタビュー記事です
急性期からリハビリ・在宅療養まで、切れ目のない医療を函館市民に提供している西堀病院（１９６４年設立）。２０２４年４月から形成外科・皮膚科（担当医師・松本 佳隆氏）を新設し、診療の幅がさらに広がった。金子 行宏院長と松本医師にご同席頂き、同院が誇る大腸がん検査・治療から、形成外科・皮膚科の目指す診療まで詳しく話を伺った。
―まず大腸肛門病をご専門とする金子院長に、大腸がんが増加傾向にある主な原因について伺います
金子 院長 食生活の欧米化、特に動物性脂肪を多く摂取する食習慣が、原因の一つとして指摘されています。高脂肪食をたくさん摂ると、それを消化するために多量の胆汁が分泌されます。そして胆汁の中に含まれる胆汁酸が、腸内細菌の作用により２次胆汁酸となり、大腸粘膜を刺激して大腸がん発生の促進因子として働くと考えられています。
―金子院長は大腸がん検診の重要性を啓発しておられます。
金子 院長 他の臓器に比べ大腸がんは、早期発見・早期治療により高い治癒率が期待できます。にもかかわらず日本では、大腸がんが男女ともに死因の上位を占め、特に女性では第１位となっています。我が国の大腸がん検診の受診率を調べてみると、２０１９年のデータで男性47.8％、女性40.9％となっており、２０１８年の米国の受診率66.8％と比較すると低い数字と言えます。米国では近年、高脂肪食が日常であるにもかかわらず大腸がんの罹患者は減少しており、検診の有効性を裏付ける証左と言えます。
―大腸がん検診の主なものに、便潜血反応検査と内視鏡検査があります。手順について教えてください。
金子 院長 大腸がんに対しては、まず便潜血反応検査を用いた検診が実施されています。陽性の結果が出た場合、精密検査、主に大腸内視鏡検査が行われます。この時点で大腸がんが見つかるのは２％ほどの確率ですが、約10％に大腸ポリープ等の良性疾患が見つかります。大腸ポリープのうち、多くを占める腺腫性ポリープは、大きくなるとがん化する可能性があります。この腺腫性ポリープを内視鏡的に切除してしまうことで、大腸がんの発生を少なくできます。言い換えると、腺腫性ポリープを大きくなる前に早期発見し、除去することが大切だということです。
―次に、４月に開設した形成外科・皮膚科について伺います。松本先生が、当院に移籍して来られた経緯を教えてください。
松本 医師 以前勤めていた病院でも、形成外科を新設させて頂き、外来に力を入れておりました。残念ながら病院の方針で外来枠が減り、不自由な思いをしておりました。そんな中、ありがたいことに当院から御縁を頂き、形成外科・皮膚科の開設に至った次第です。
―対象疾患がイメージしづらい形成外科ですが、本質について教えてください。また、貴院の形成外科が目指す診療の特徴について伺います。
松本 医師 例えば交通事故などで、顔面に重度の外傷を負った患者様がいるとします。美容外科的な治療が必要なため、一般の外科や整形外科、皮膚科だけでは対応できない場合がほとんどです。ではどの診療科が治療するのか？となった時に、誕生したのが形成外科です。外科・整形外科・皮膚科などの診療科を横断し、各診療科のニッチな部分を担当するのが形成外科の役割といえ、日本では高度成長期に、東京大学や東京警察病院で始まったと聞いております。ただし当院の形成外科・皮膚科では、もっと敷居を下げて幅広く診療を行っていきます。具体的には、お子様のちょっとしたケガ（切り傷、擦り傷、やけどなど）や、皮膚・皮下のできもの・爪のトラブル（母斑、腫瘍、ウオノメ、タコ、イボ、陥入爪、床ずれ）などに対応します。
―最後になりますが、金子院長と松本先生から、地域の皆様にメッセージをお願いします。
金子 院長 大腸がんの早期発見・早期治療のため、40歳以上の方には定期的な検診をお勧めします。検査の苦痛を和らげるため、当院では鎮静化での大腸内視鏡検査を提供しております。私自身、函館の地で２万例を超える大腸内視鏡検査を行ってまいりましので、どうぞ安心してお任せください。
松本 医師 基幹病院では紹介状による診療が主流になり、ちょっとしたケガの場合、どこで治療を受ければいいのか迷う患者様が多いはずです。当院の形成外科・皮膚科は、「かかりやすさ」をモットーに診療してまいります。犬にかまれた、猫に引っ掛かれたなど、ちょっとしたケガでも構いません。大きな病院に比べ、少ない待ち時間で治療が可能ですので、どうか気楽にご来院ください。
