当院は、胃カメラ・大腸カメラ検査を含む消化器全般を診療していますが、今回は大腸カメラ検査についてお話します。
最新の統計によると、大腸がんにかかる方は年間15万8千人超で、がんの中でもっとも罹患数が多く、死亡数も二番目に多い5万4千人と予測されています (参考 1) 。男女ともに40歳代から増えはじめ、高齢になるほど増加していきます。大腸がんは身近で危険性の高い病気といえます。
大腸がんはどのように発生するのでしょうか。ポリープががん化して発生、正常な粘膜に直接がんが発生する、二つのパターンがあります。ポリープにはいくつかの種類がありますが、将来がん化する可能性のあるポリープを「腺腫」といいます。
ところで、大腸内視鏡検査の最大の目的は何だと思いますか? それは、がん化する前の腺腫を見逃さず、一つでも多く病変を発見し、切除することです。この腺腫を発見する割合を「腺腫発見率 (=ADR)」といいます。ADRは大腸カメラ検査において非常に重要な指標です。なぜならADRが高いと大腸がん発症および死亡のリスクが減ると報告されているからです(世界的に著名な総合医学雑誌・The New England Journal of Medicine) 。関心のある方は (参考 2) をご覧ください。
つまり、大腸がんに育つ前の「腺腫」を発見し治療することは、究極の大腸がん予防ともいえるのです。もちろんポリープが腺腫かどうかを見極める「診断力」、腺腫の見逃しをしない「精度」が重要であることは言うまでもありません。
では、内視鏡医に必要なADRの値はどのくらいでしょうか。アメリカ消化器内視鏡学会 (ASGE) のガイドラインにはADR 25%以上になることが求められています。参考までに、当クリニックのADRは54%でした (大腸内視鏡検査数が3,503件のうち腺腫性ポリープは1,911件。期間2020年8月から2023年7月まで) 。
大腸がんは生活習慣、特に食の欧米化で赤肉、加工肉、アルコールの過剰な摂取、それから喫煙、糖尿病、肥満もリスクを高めると考えられています。健診の便潜血検査で陽性だった方、親族に大腸ポリープ/大腸がんの人がいる、40歳以上で大腸内視鏡検査を受けたことがない方は、検査を考えてみてください。
そして、どこで検査を受けようかと迷ったときには、腺腫発見率 (ADR) も検討材料のひとつに加えてはいかがでしょうか。
参考 1: 国立がん研究センターがん情報サービス
参考 2: 「ADRが1%上昇すると、その後の大腸がんのリスクが3%減り、大腸がん死亡率は5%低下した」 (D.A. Corley and Others N Engl J Med 2014; 370:1298-1306) 。