近年、報道やドラマなどに精神疾患や精神科医が登場する機会が増え、うつ病や統合失調症、○○障害といった「単語」をよく耳にします。広く一般に認知されるようになったことは結構ですが、自分自身がそうした病を患って受診する場合を想像する人は、まだ多くはないようです。
仕事、家庭、人間関係…ストレス社会と言われて久しい現在、心を病む人は確実に増えています。ストレスフリーで社会生活を営むことのほうが難しいのではないか、と思える世の中です。
ストレス解消を意識して何らかの手立てを実践されている方も多いことでしょう。しかし、ストレスを上手にコントロールできる人ばかりではありません。無意識にたまっていくストレスが、思わぬ形で現れることもあります。
精神科・心療内科の診療では、精神的・心理的な原因が、気持ちあるいは身体の症状として出現し、生活の質が低下している人の、「その状況を改善させる」ことを目的としています。
みなさんがよく耳にされる病の「うつ病」も精神症状だけが出現するわけではありません。様々な身体的症状を伴うことのほうが多いのです。頭痛・肩こり・めまい・耳鳴り・吐き気・動悸・腹痛・体重減少・腰痛・足の痺れなどなど、頭のてっぺんから足の先まであらゆる症状が出現しうるのです。だからこそ、まずは「身体的な病気ではないこと」をしっかり確認する必要があるのです。なんでもストレスのせいにして、かえって身体の病気を見逃してしまっては大変ですから。
精神科の薬物療法に対する不安や「偏見」を持たれる方もいらっしゃいますが、専門医がお話を伺い、適切な診断のうえ、正しく処方された薬物は症状の改善に大いに役立ちます。正しい説明を受け、その効果と予測される副作用を理解していただければ、薬物療法は「生活の質」を向上させる非常に有効な武器となります。精神科の薬は癖になるとか、認知症になるといった間違った噂に惑わされないでください。
内科や脳外科、婦人科などで検査を受けて身体には問題がないと言われたけれど、どうも調子が良くない、眠れない、食べられない、やる気が出ないなどの症状が続くようでしたら、一度精神科を受診してみてください。
人の「心のエネルギー」は想像以上に大きなもので、良いほうにも悪いほうにも影響を与えます。
ものごとの受け止め方のちょっとした工夫で「生活の質」は相当向上します。体調を整えるのと同様に、心を整えることはとても重要なことなのです。どうぞ心の健康にご留意ください。
うつ病の治療には、根気が必要です。はじめから劇的に症状がよくなるということはありません。
一般的に、治療には半年から1年くらいかかると考えてください。
頑張りすぎないようにしましょう。あせらず、急がず、4つの時期に応じた準備が必要です。
復職して1~3か月程度は、まだまだ不安定な状態です。